『例えば古い和歌の世界で詠われる望郷の対象は都にあった。
やがて立身出世の時代には多くの若者が上京し、
あとに残してきた田舎に思いを馳せたと思う。
そして世界のボーダレス化が進むにつれて、
人々は再び東京から此方彼方へと離散しては遠い都をしのんでいる、
それが現代なんじゃないでしょうか。
しかしそれは頭の上に拵えた、イミテーションとしてのトーキョーだ。
なぜならばそもそもの結びつきがさほど強くないからだ。
しかしトーキョーは何人も拒まないし、ひき止めることもない。
たくさんの夢の遺灰で埋め立てられた、巨大な母なる国としてのトーキョー。
綿毛のようにトーキョー難民は身軽だ。
旅は疾走する。情緒は追いつかない。
君のホームはいったいどこにある?
ぐるぐるとあてどもない旅は続いて、
降りたそこがきっと紛れもない「ホーム」だ。』
- あるぱちかぶと 2010年2月
Comments
Post a Comment